こんにちは、労務行政書士事務所 三九 です。
前回、新成人の方への注意で末尾に、国民年金の学生納付特例を説明しました。
その続きとして、今回は年金の被保険者について述べたいと思います。
確認のみの方は、末尾の条文などをご参照ください。
第1号被保険者(2号と3号に該当しない者)
内容など
20歳になると、日本年金機構から「国民年金の加入のお知らせ」が届くと思います。
内容は、氏名・生年月日や基礎年金番号などが記載されています。
まずは、記載ミスなどがないか確認しましょう。
もし、記載ミスがあった場合には、お近くの年金事務所や市区町村の国民年金取り扱い部署にお尋ねください。
被保険者たる法定要件ですが、日本国内居住の20歳以上60歳未満の学生・農林漁業者・自営業者・無職の方等で、会社員や公務員などに該当しない方(第2号や第3号被保険者に該当しない)は強制加入になります。
20歳から60歳の40年が加入期間(=被保険者期間)となります。
被保険者期間は40年(40×12=480か月)が満額。
反対に最低の被保険者期間は、10年(保険料納付済み期間やカラ期間)。
被保険者期間が10年を満たさない又は35年など期間が満額にならない方は、任意加入をご検討ください。
国民年金保険料は、第1号被保険者が全額納付します。
任意加入・特例任意加入制度
任意加入制度
任意加入(=被保険者期間が足りない方、満額ではない方)制度は、10年の期間を満たしていない又は満額40年の期間(40年=480か月を超えることはできません)を満たしていない方が、下記の要件を満たしている場合に加入できます。
1.国内居住の60歳以上65歳未満
2.老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない
3.厚生年金保険、共済組合等に加入していない
4.日本国籍を有しない方で、在留資格が医療滞在または医療滞在者の付添人や観光・保養等を目的とする長期滞在または長期滞在者の同行配偶者で滞在する方ではない
また、海外に出国される方でも日本国籍の方(20歳から65歳未満)は市区町村で手続きをすれば任意加入できます。
特例任意加入制度
特例任意加入は、最低10年の被保険者期間(=120か月→12か月×10年)を満たせない方が10年の期間を満たすための制度です。
65歳以上70歳未満、国内居住者や海外在住の日本国籍保持者で厚生年金保険に加入していない方です(1965年4月1日以前生まれで老齢基礎年金を受けるための受給資格期間を満たせない人に限定)。
保険料が払えない場合など
学生納付特例
申請により、学生は在学中の保険料納付が猶予される制度です(追納が可能)。
要件など
学生本人の所得(家族の所得は問わず、本人の所得で判断。下記、計算式の金額の範囲内であること)や対象校の学生であること、が必要です。
所得=128万円(令和2年度以前は118万円)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
対象校=日本年金機構 対象校一覧
保険料の追納
追納ができるのは追納が承認された月の前10年以内に限られます。
*老齢年金の期間には算入されますが、支給金額に算入されないため追納を行い、支給額を増加することが目的です(免除制度については納めた金額により異なります)。
納付猶予制度
50歳未満の方で本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、申請により保険料の納付が猶予される制度です(追納が可能)。
前年所得が下記で計算した金額の範囲内であることが必要です。
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(令和2年度以前は22万円)
*令和12年6月までの時限措置とされています。
免除制度
免除制度には、全額・4分の3・半額・4分の1があります(追納が可能)。
本人・世帯主・配偶者の前年所得が下記で計算した金額の範囲内であることが必要です。
●全額=(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(令和2年度以前は22万円)
●4分の3=88万円(令和2年度以前は78万円)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
●半額=128万円(令和2年度以前は118万円)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
●4分の1=168万円(令和2年度以前は158万円)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
*減額された保険料を納めないと「未納」と同等の扱い(=支給額が減ったまま)になりますのでご注意ください。
産前産後期間の免除制度
産前産後期間の保険料を免除し、産前産後免除の期間は、被保険者期間と年金支給額に算入されます。
産前産後期間とは、出産予定日(又は出産日)の属する月(以下「出産予定月等」)の前月(多胎妊娠(双子等)の場合は3月前)から出産予定月等の翌々月までの期間、を指します。
未納
国民年金保険料を納めていない場合に、日本年金機構などから督促などが行われます。
追納をすることができず、最高2年分(未納期間により変わります)を請求されることになります。
また、放置をしていると、強制徴収をされる場合がございます。
できるだけ早急に日本年金機構などにご確認ください。
一括納付が難しい場合には、分割納付などのご相談を。
ここから
*令和元年度、差押えは2.1万件。強制徴収の取り組みは、控除後所得 300 万円以上かつ未納期間 7 月以上の未納者を対象に最終催告状(度重なる納付督励を実施しても未納が解消されない者(所得 300 万円以上、未納期間 7 月以上の者)に対し、自主納付を促すため送付する最後の催告文書。最終催告状の指定期限までに納付されない者に対しては督促状を送付し、督促状の指定期限までに納付されない場合は、滞納処分が開始)を送付した上で、それでもなお自主的に納付しない方については、滞納処分を実施。
*令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、督促や差押などの滞納処分を停止したため、強制徴収対象者に該当する方を含め納付督励を実施。
ここまで 日本年金機構令和元年・2年度業務実績の評価 より
* 最近は悪質な詐欺などがございます。念のため、ハガキの記載内容と日本年金機構のHP上の内容や電話番号などが一致しているかご確認を! 日本年金機構 トップページ
第2号被保険者(厚生年金保険の被保険者)
被保険者の分類
第2号被保険者は、会社員や公務員などの厚生年金や共済組合加入者のことです。
よく2階建てと言われる理由は、1階が国民年金、2階が厚生年金で構成されているからです。
保険料は、ご自身と会社などが折半負担(18.3%を9.15%ずつ負担)し、会社などが納付します。
分類すると、3つに分けられます。
- フルタイムの被保険者
- フルタイム被保険者の4分の3基準に該当するもの
- 上記2つに該当しない適用拡大による被保険者(以下、「適用拡大被保険者」という)
*適用拡大被保険者の要件は、下記参照してください。
被保険者資格取得基準=4分の3基準➡フルタイム被保険者の4分の3
被保険者に該当するか否かは、4分の3基準によって判断されます。
被保険者資格取得基準(4分の3基準)
1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上、となっています。
常時雇用者の1日8時間労働の週5勤務で月を20日と考えた場合に、週の労働時間が30時間以上で月15日以上勤務なら被保険者に該当します。(4分の3基準=週40時間➡30時間、月20日➡15日)
保険料の納付年齢についてですが、適用事業所で働いていれば、下限に定めはなく(中学校卒業後・高校卒業後でも適用事業所で働き始めれば、第2号被保険者に該当)、上限は原則70歳(例外は高齢任意加入被保険者)になります。
短時間労働者の基準(=適用拡大被保険者)
*現行(2022-2月時点)
下記の5条件を全て満たすと、短時間労働者(=適用拡大被保険者)に該当し、被保険者として扱われます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上見込まれている
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 学生でない
- 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めている
*2022-10-1(令和4年10月=本年10月から)より上記の要件(1,3,4は変わらず)が一部変更になります。
- 雇用期間が2か月を超えて見込まれている(通常の被保険者と同じ)
- 常時101人以上の企業
*2024-10-1(令和6年10月から)の改正では、令和4年の人数要件が変更(1,3,4は変わらず。雇用期間は2か月を超えて)になります。
- 常時雇用51人以上の企業
と改正されることにご注意ください。2022-2月時点
第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)
第2号被保険者に扶養される配偶者、年齢は20歳以上60歳未満、年収が130万円未満(詳細をお知りになりたい方は被扶養者の収入要件でご確認を)です。
*年収が130万円未満であっても、上述の短時間労働者(=適用拡大被保険者)に該当する場合は第2号被保険者になりますので、ご注意ください。
国民年金法 条文
(被保険者の資格)第七条
次の各号のいずれかに該当する者は、国民年金の被保険者とする。
一 日本国内に住所を有する二十歳以上六十歳未満の者であつて次号及び第三号のいずれにも該当しないもの(厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)に基づく老齢を支給事由とする年金たる保険給付その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であつて政令で定めるもの(以下「厚生年金保険法に基づく老齢給付等」という。)を受けることができる者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「第一号被保険者」という。)
二 厚生年金保険の被保険者(以下「第二号被保険者」という。)
三 第二号被保険者の配偶者(日本国内に住所を有する者又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者に限る。)であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの(以下「第三号被保険者」という。)
2 前項第三号の規定の適用上、主として第二号被保険者の収入により生計を維持することの認定に関し必要な事項は、政令で定める。
3 前項の認定については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
昭和五二年四月六日 保発第九号・庁保発第九号 より
1 被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)が被保険者と同一世帯に属している場合
(1) 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は、原則として被扶養者に該当するものとすること。
(2) 前記(1)の条件に該当しない場合であっても、当該認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上廻らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的に勘案して、当該被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者に該当するものとして差し支えないこと。
2 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が、130万円未満(認定対象者が60歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合には、原則として被扶養者に該当するものとすること。
被扶養者認定要件などの詳細をお知りになりたい場合
日本年金機構より 被扶養者の認定など