適用拡大と社会保険料の改定等

社会保険

 こんにちは、労務行政書士事務所 三九 です。

 社会保険(厚生年金等)の保険料は、適用・決定等と様々な種類があり、簡単な解説・分類をしています。

 適用拡大等も施行開始から1か月が経過しましたので、整理確認をしておくことをお勧めします。

資格取得時決定(会社等へ入社)

*厚生年金法22条

時期=入社月(被保険者該当要件満たす場合)

月給制:初任給に諸手当を加えた額をもとに計算し、入社月が日割り計算をする場合でも、月額を被保険者資格取得届に記載。

週給制:週給を7で除して30倍した額を被保険者資格取得届に記載します。

日給制時給制:資格取得月の前月にその事業所等で同じような仕事をして同じような報酬を受ける労働者の方たちの報酬の平均額を被保険者資格取得届に記載します。

定時決定(毎年1回)

*厚生年金法21条

時期=7月

 毎年1回、原則7月1日現在の被保険者全員について、4月から6月(3か月間)に受けた報酬の届出を行い、その年の9月以降の標準報酬を決定。

報酬となるもの・ならないもの

報酬となるもの報酬とならないもの
通貨で支給されるもの基本給(月給・週給・日給など)
能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、
物価手当、日直手当、宿直手当、
家族手当、扶養手当、休職手当、
通勤手当、住宅手当、別居手当、
各種手当等
残業手当
・年3回以下の賞与等
・年金、恩給、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、解雇予告手当等
・見舞金や慶弔費等の給与規定等に基づかず不定期的で恩給的なもの
・出張旅費、交際費等
現物で支給されるもの・食事、食券
・社宅、寮(⇔上記の住宅手当)
・被服(勤務服でないもの)
・通勤定期券、回数券(⇔上記の通勤手当)
・食事(本人負担額が標準価額により算定した額の 2/3 以上の場合)
・住宅(本人負担額が標準価額により算定した額以上の場合)
・被服(業務に要する制服、作業着等)

随時改定(該当時に適宜実施)

*厚生年金法23条

時期=不明(該当時に適宜実施)

 固定的賃金等の変動(上昇・下降や変更)に伴い、2等級(例外1等級)の差が3か月継続した場合、4か月目から標準報酬月額を改定。

 固定的賃金が、

①上昇して、2等級以上上昇(固定低賃金のみ又は固定的賃金+非固定的賃金) 

②下降して、2等級以上下降(固定低賃金のみ又は固定的賃金+非固定的賃金) 

すると随時改定該当(固定的賃金の変動と等級結果の方向が同方向の場合に該当)

➡固定的賃金の変動を伴わないもの(=非固定的賃金の変動のみ)は、随時改定に当たりません。

*現物給与の標準価額改正は、固定的賃金の変動に当たります。

固定的賃金 : 稼働実績等に関係なく一定額(率)が継続して支給される。

非固定賃金 : 稼働実績等により変動して支給される。

固定的賃金非固定的賃金
基本給(月給や週給等)
家族手当や通勤手当等の固定的手当て
基礎単価(日給や時給)
残業手当、宿日直手当、精皆勤手当て等

 年金機構 令和4年4月 全国現物給与価額一覧表

育児休業等終了時改定

*厚生年金法23条の2

時期=育児休業等終了日の翌日が属する月から起算して4か月目

対象者

 育児休業等を終了した日において3歳未満の子を養育している被保険者が、下記のいずれにも該当すると申し出を行うことができます。

① 休業終了日の翌日が属する月以後3か月間の報酬の平均額を算出した標準報酬月額が、現在の標準報酬月額と比べて1等級以上の差が生じていること

②休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうちに支払基礎日数17日以上*の月が1か月以上あること

短時間労働者は、11日以上

4分の3基準該当者は、3か月のいずれも支払基礎日数17日未満の場合、15日以上17日未満の月が1か月以上あること

 育児休業等終了時報酬月額変更届

 4分の3基準

育児休業期間中は、事業主の申出により保険料免除があります(休業中に申出)。

保険料免除期間=育児休業等の開始日の属する月から育児休業等終了日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)まで

 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届

 育児休業開始日と終了予定日(月の末日の場合を除く)が同月内にある場合には、保険料免除の対象となりません。

令和4年10月1日以降の注意点

①育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合にも保険料免除。

②賞与・期末手当等にかかる保険料も免除されますが、令和4年10月以降は、当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り保険料免除。

改定方法

 休業終了日の翌日の属する月以後3か月間に受けた報酬の合計を3で除した平均額を標準報酬月額等級区分に当てはめ。

 ただし、報酬の支払基礎日数が17日未満(短時間労働者は11日未満)の月がある場合、その月を除いて平均額を計算。

 そして、現在の標準報酬月額と比較して1等級以上の差がある場合、その平均額を報酬月額として標準報酬月額を改定。

産前産後休業終了時改定

*厚生年金法23条の3

時期=産前産後休業終了日の翌日が属する月から起算して4か月目

対象者(育児休業等終了時改定と同じ内容)

 産前産後休業を終了した日においてその休業に係る子を養育している被保険者が、下記のいずれにも該当すると申し出を行うことができます。

① 休業終了日の翌日が属する月以後3か月間の報酬の平均額を算出した標準報酬月額が、現在の標準報酬月額と比べて1等級以上の差が生じていること

②休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうちに支払基礎日数17日以上*の月が1か月以上あること

短時間労働者は、11日以上

4分の3基準該当者は、3か月のいずれも支払基礎日数17日未満の場合、15日以上17日未満の月が1か月以上あること

 産前産後休業終了時報酬月額変更届

産前産後休業期間中は、事業主の申出により保険料免除があります。

保険料免除期間=産前産後休業の開始日の属する月から産前産後休業終了日の翌日が属する月の前月まで

 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届

改定方法(育児休業等終了時改定と同じ内容)

 休業終了日の翌日の属する月以後3か月間に受けた報酬の合計を3で除した平均額を標準報酬月額等級区分に当てはめ。

 ただし、報酬の支払基礎日数が17日未満(短時間労働者は11日未満)の月がある場合、その月を除いて平均額を計算。

 そして、現在の標準報酬月額と比較して1等級以上の差がある場合、その平均額を報酬月額として標準報酬月額を改定。

産前産後・育児休業等終了時改定の注意点や随時改定との違い

産前産後・育児休業等終了時改定の注意点

 産前産後休業終了後に引き続き育児休業を開始した場合、産前産後休業終了時改定の対象にはならず、また、育児休業等終了後引き続き産前産後休業を開始した場合、育児休業等終了時改定の対象になりません

随時改定との違い

①固定的賃金の変動や賃金体系(給与)の変更がなくても改定できる。

②3か月間の支払基礎日数が17日未満(短時間労働者は11日未満)の月があっても改定できる(17日〔11日〕以上の月が1か月以上は必要)。

③標準報酬月額の等級差が1等級でも改定できる。

④被保険者が申出た場合に改定。

定年退職後(60歳以上)の継続再雇用に基づく保険料決定

 60歳以上の方が定年退職し、同日得喪の継続再雇用(1日も空けずに同じ会社等に雇用されること)された場合に、再雇用された月からの再雇用後の給与に基づく標準報酬月額に改定できる仕組み。

 標準報酬月額41万円(24等級)の者が退職し、継続再雇用後の標準報酬月額30万円(19等級)であった場合、標準報酬月額30万円の保険料が継続再雇用の月から適用されます。

→7月31日退職(24等級の保険料)、8月1日継続再雇用(19等級の保険料)

 主に退職日と再雇用日を確認され、退職日のわかる書類、雇用契約書、就業規則、役員の場合は役員規程等、事業主の証明など様々必要です。

 同日得喪のため、被保険者資格取得届・喪失届が必要になります。

 被保険者資格取得届 被保険者資格喪失届 事業主の証明

 必要に応じて、健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届 を提出してください。

適用拡大(令和4年10月1日以降)

 標準報酬月額8.8万円の短時間労働者=適用拡大に該当する被保険者(以下「短時間労働者」とする)の取り扱い

令和4年10月1日から令和年10月1日から
常時100人を超える常時50人を超える
変更なし変更なし
雇用期間が2か月超が見込まれる変更なし
変更なし変更なし
変更なし変更なし

8.8万円から、下記のものは除外し、それ以外の諸手当などを含めた所定内賃金額で8.8万円を考えます。

* 除外するもの(=以下、「除外額」)

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金など)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)

保険者算定(定時決定及び随時改定)

別種類の申立書と同意書が必要になります!

定時決定の保険者算定

算定が困難な場合

4・5・6月の各月支払基礎日数が17日未満(4分の3基準者は17日未満の場合は15日以上、短時間労働者は11日以上)や病気欠勤等で全く報酬がなかった場合 

➡ 従前の標準報酬月額

著しく不当な場合

●4・5・6月のいずれかの月に

①3月分以前の給与の遅配分を受けた :遅配分を除いて算定

②3月以前に遡った昇給分を差額を受けた :昇給差額分を除いて算定

③低額の休職給をうけた :定額分を除いて算定又は3か月とも低額の場合は従前の報酬額

●4・5・6月のいずれかの月の給与が

④7月以降に支給を受ける :遅配月を除いて算定

●給与計算の締切日変更により、支払基礎日数が増加 :超過分を除いて算定

●4・5・6月の報酬額を基にした標準報酬月額と過去1年間(前年算定)の月平均報酬額から算定した標準報酬月額と2等級以上の差があり、当該差は業務の性質上、例年発生が見込まれる :申し出により過去1年間の月平均報酬額によって算定

随時改定の保険者算定

●昇給月と繁忙期が重なる(年間平均の保険者算定)

①現在の標準報酬月額と通常の随時改定による標準報酬月額を比較した場合に2等級以上の差がある

②通常の随時改定による標準報酬月額と年間報酬の月平均額による標準報酬月額を比較した場合に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる

③年間報酬の月平均額による標準報酬月額と現在の標準報酬月額を比較した場合に1等級以上の差がある

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