標準報酬月額8.8万円の被保険者(適用拡大該当者)

社会保険

* 令和4年3月時点では、社会保険(健康保険・厚生年金)の適用拡大の取り扱いにおける、要件変更(特定適用事業所要件である常時500人超、雇用期間要件1年以上見込みが、令和4年10月1日より100人超、2か月以上)以外の判断基準は同一適用と考えられています(確認は先だって取っておりますが、内容変更なども考えられますので、ご注意ください)。

 こんにちは、労務行政書士事務所 三九 です。

 以前、国民年金法から見た被保険者 の中で短時間労働者(適用拡大に該当する被保険者)の基準を少し解説しました。

 今回は、標準報酬月額8.8万円の短時間労働者=適用拡大に該当する被保険者(以下「短時間労働者」とする)の取り扱いについて記載したいと思います。

月額賃金8.8万円での社会保険適用拡大に該当

 まず、8.8万円を確認します。下記の保険料額表から厚生年金では等級が1、けんぽ協会では等級が4になります(協会けんぽ保険料額表は、埼玉県です。ご注意ください)。

 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)

 埼玉県協会けんぽ 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 

 この8.8万円から、下記のものは除外し、それ以外の諸手当などを含めた所定内賃金額で8.8万円を考えます。

* 除外するもの(=以下、「除外額」)

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金など)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)

 除外額を除き、8.8万円以上で、残りの短時間労働者の基準(社会保険の適用拡大要件)を満たすと被保険者に該当することになります。

平成28年10月1日から令和4年10月1日から令和年10月1日から
常時500人を超える常時100人を超える常時50人を超える
週の所定労働時間が20時間以上変更なし変更なし
雇用期間が1年以上見込まれる雇用期間が2か月超が見込まれる変更なし
標準報酬が8.8万円以上変更なし変更なし
学生でない変更なし変更なし

表中の人数要件は、①フルタイム被保険者と②フルタイム被保険者の4分の3基準を満たす被保険者(パート・アルバイトでも条件を満たしていれば該当)の合計数です。

*表中の「常時」について、(下記のは、表中の人数を指しています)

 事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、

①常時人を超えるか否か 

②12ヵ月のうち、6ヵ月以上人を超えることが見込まれる

 事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、

①常時人を超えるか否か 

②12ヵ月のうち、6ヵ月以上人を超えることが見込まれる

短時間労働者が定時決定(算定基礎届)前に支給される給与が標準報酬月額9.8万円に該当する場合

 定時決定(4月、5月、6月に支払われた報酬で、標準報酬月額を7月に決定し、大きな変動〈通常は2等級の変動〉がなければ翌年の定時決定までその標準報酬月額≪=等級≫を使用します)前に報酬が上昇し、厚生年金の2等級(=標準報酬月額は9.8万円)に該当した場合を見てみます。

 厚生年金の2等級は9.3万円以上10.1万円未満です。

 この1等級から2等級に昇給(降給する場合も下記要件は同じ)する場合に、

  • 固定的賃金が上昇(降給の場合は下降)している
  • 変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じた
  • 3カ月とも支払基礎日数が11日以上

 の上記3要件をみたすと、随時改定に該当します。

固定的賃金の例固定的賃金の例
基本給(月給・週給、日給)残業手当
家族手当能率手当
通勤手当日直手当
住宅手当休日勤務手当
役付き手当精勤手当
勤務地手当その他
その他

 ここで一つ注意点があります。

 8.8万円の方が、残業代支給により2等級の9.8万円や3等級の10.4万円などに該当した場合です。

 上記の表のとおり、単純に残業代のみであれば、随時改定に該当しませんが、

 固定的賃金の上昇があった場合(極端な事例ですが時給などが1円でも上昇)、残業代が支給され、上記の要件を満たすと、随時改定に該当します。

* 随時改定は、通常2等級の上下幅で判断されますが、下記の場合は、1等級の上下幅で変更になります。

 厚生年金 1等級⇔2等級(昇級・降級)、31等級⇔32等級(昇級・降級)

 健康保険 1等級⇔2等級(昇級・降級)、49等級⇔50等級(昇級・降級)

 厚生年金の1等級と健康保険の1等級は標準報酬月額が異なります。

定時決定(算定基礎届)時の取り扱い

 7月1日現在で使用される特定適用事業所に勤務する短時間労働者について、同日前3カ月間(4月、5月、6月、いずれも支払基礎日数11日以上に受けた報酬の総額をその期間の総月数で除して得た額を報酬月額として標準報酬月額を決定します(11日未満であった場合は、その月を除き、残りの月で算定。例えば、6月が支払い基礎日数11日未満の場合は、4・5月の2か月で算定)。

 資格取得時と定時決定で違いがあります。それは、取得時に除外された上述の除外額(臨時に支払われる賃金など)も労働者が、労働の対償として受けるすべてのものとして標準報酬月額の決定に算入されます。

報酬に該当するもの報酬に該当しないもの
基本給(日給・月給・週給など)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上支給の賞与など大入り袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下支給の賞与など
報酬となる現物報酬とならない現物
通勤定期券、回数券、食事、職権、社宅、寮、被服(勤務服でないもの)、自社製品など制服、作業着(業務に要するもの)、見舞い品、本人負担3分の2以上の食事など
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