時間外労働(監督署の調査結果からみえること)

労働

 今日は、労務行政書士事務所 三九です。

 東京と埼玉は、令和3年の定期監督等の実施結果の発表がありました(神奈川、千葉は発表方法が違います)。

 今後、厚生労働省の労働基準監督年報も発表されます。

*神奈川・千葉は、個別の(長時間労働等)発表はありますので、ご注意ください。

  1. 東京都・埼玉県の令和3年の定期監督等の実施結果
    1. 東京都で違反内容が多かったもの
    2. 埼玉県で違反内容が多かったもの
  2. 令和2年の労働基準監督年報
  3. 条文について
  4. 注意すべき事項は?
  5. 労働時間の管理が大事な理由
    1. 労働基準法32条
    2. 時間外労働(36協定に関するもの)
  6. 36協定
    1. 一般条項(様式第9号)
    2. 特別条項(様式第9号の2)
      1. 通常の場合
      2. 1年単位の変形労働時間制
      3. 図表
  7. 血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準(令和3年9月 14 日)
    1. 業務の過重性の評価(長期間の過重業務)
      1. 労働時間(=時間外労働による労災認定基準)
    2. 労働時間以外の負荷要因
      1. 労働時間以外の負荷要因の内容(簡易記載)
        1. ①勤務時間の不規則性(簡易記載)
          1. 拘束時間の長い勤務
          2. 休日のない連続勤務
          3. 勤務間インターバルが短い勤務
          4. 不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
        2. ②事業場外における移動を伴う業務(簡易記載)
          1. 出張の多い業務
          2. その他事業場外における移動を伴う業務
        3. ③心理的負荷を伴う業務(簡易記載)
          1. 日常的に心理的負荷を伴う業務
          2. 心理的負荷を伴う具体的出来事
        4. ④身体的負荷を伴う業務(簡易記載)
        5. ⑤作業環境(簡易記載)
          1. 温度環境
          2. 騒音
  8. 2023年4月から中小企業も時間外労働60時間超過部分は1.5倍
    1. 中小企業要件
  9. 神奈川・千葉の監督指導結果
  10. まとめ

東京都・埼玉県の令和3年の定期監督等の実施結果

東京都で違反内容が多かったもの

1,安全基準に関するもの 2,282事業場

2,違法な時間外労働 1,521事業場

3,健康診断 1,417事業場

埼玉県で違反内容が多かったもの

1,労働時間 427事業場

2,安全基準 360事業場

3,割増賃金 335事業場

令和2年の労働基準監督年報

1,安全基準 22,432

2,健康診断 20,153

3,労働時間 19,493

4,割増賃金 16,701

5,労働条件の明示 10,817

条文について

安全基準 労働安全衛生法20~25条

健康診断 労働安全衛生法66条等

労働時間 労働基準法32条

割増賃金 労働基準法37条

労働条件明示 労働基準法15条

注意すべき事項は?

 法定項目である以上、すべて大事で、蔑ろにしてよいものではありません。

 ただし、安全基準や特殊健康診断は、全ての業態に該当するわけではありません(有害危険業務は、通常より安全な基準を設け、健康診断等も通常のものとは違うものを設け、記録も長期保存が義務になっています)。

 一般の健康診断は、常時使用する労働者についてはどの業態にも共通ですし、長時間労働にも関係してくるので注意が必要です。

労働時間の管理が大事な理由

労働基準法32条

 労働時間で該当している法律は、労働基準法32条になります。

第三十二条 

  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 条文から判ることは、時間外労働が問題になっていることです。

時間外労働(36協定に関するもの)

 では、時間外労働を分解してみましょう。

1,36協定を提出せずに、時間外労働をしている。

2,36協定は提出しているが、それ以上の時間外労働をしている(特別条項を提出していない)。

3,36協定の特別条項を提出しているが、その内容を遵守していない。

 上記の3点は全て法違反状態になります。

36協定

 原則として、36協定を提出しないのであれば、時間外労働はできません。

 つまり、労基法32条の1週間40時間、1日8時間を超えて労働させることはできないことになります。

 また、休日労働をさせる場合にも、提出が必要になります。

一般条項(様式第9号)

 36協定を提出することにより、

 通常は、1か月45時間以内、1年間360時間以内

 1年単位変形労働制を採用している場合には、1か月42時間以内、1年320時間以内

が限度時間になります。

特別条項(様式第9号の2)

通常の場合

 1か月45時間を超えて時間外労働ができるのは、年6回以内で、1か月の時間外労働と休日労働の合計の時間数は、月100時間未満に限ります。

 また、この時間を満たしていても、2~6か月平均で80時間を超えることができません。

*平均の考え方は、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれも平均80時間を超えてはいけません!

 最後に、年360時間を超えて労働させる1年間の時間外労働(休日労働は除外)は年720時間が限度時間になります。

1年単位の変形労働時間制

 1か月42時間を超えて時間外労働ができるのは、年6回以内で、1か月の時間外労働と休日労働の合計の時間数は、月100時間未満に限ります。

 また、この時間を満たしていても、2~6か月平均で80時間を超えることができません。

*平均の考え方は、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれも平均80時間を超えてはいけません!

 最後に、年320時間を超えて労働させる1年間の時間外労働(休日労働は除外)は年720時間が限度時間になります。

図表

  36協定なし 36協定(一般) 36協定(特別)
通常 1年変形 通常 1年変形
1か月 45時間 42時間

左の時間を超えるのは、年6回以内。

時間外+休日=100時間未満(1か月)

2~6か月平均で80時間

(平均の考え方に注意)

1年 360時間 320時間

左の時間を超え、年間720時間

(休日労働除く)

血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準(令和3年9月 14 日)

業務の過重性の評価(長期間の過重業務)

労働時間(=時間外労働による労災認定基準)

長期間の評価期間 = 発症前おおむね6か月間(発症前おおむね6か月より前の業務については、疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価するに当たり、付加的要因として考慮されます)

①発症前1か月間に100時間 又は 2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強い、と評価されています

*月45時間を超えて長くなるほど関連性は強まり、発症前1~6か月間平均で月45時間以内の時間外労働は、発症との関連性は弱い、と評価されています。

*ここで述べている労働時間は、36協定提出によりできる時間外労働を指しています。

労働時間以外の負荷要因

上記の①水準までには至らないがこれに近い時間外労働 

+ 

一定の労働時間以外の負荷要因

でも認められます。

労働時間以外の負荷要因の内容(簡易記載)

①勤務時間の不規則性(簡易記載)
拘束時間の長い勤務

*拘束時間:始業から終業までの拘束される時間(労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束される)

➡拘束時間の長い勤務について、拘束時間の長い勤務拘束時間数、実労働時間数、労働密度、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況、業務内容等の観点から評価

休日のない連続勤務

➡休日のない(少ない)連続勤務ついて、連続労働日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度、業務内容等の観点から評価

勤務間インターバルが短い勤務

*勤務間インターバル:終業から始業までの時間

➡勤務間インターバルが短い勤務について、その程度や業務内容等の観点から評価

不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務

*不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務:予定された始業・終業時刻が変更される勤務、予定された始業・終業時刻が日や週等によって異なる交替制勤務、予定された始業又は終業時刻が相当程度深夜時間帯に及び夜間に十分な睡眠を取ることが困難な深夜勤務

➡不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務について、事前の通知状況、予定された業務スケジュールの変更の予測の度合、交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度、一勤務の長さ、一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況、業務内容及びその変更の程度等の観点から評価

②事業場外における移動を伴う業務(簡易記載)
出張の多い業務

➡出張の多い業務について、出張の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容等の観点から検討し、併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価

その他事業場外における移動を伴う業務

➡その他事業場外における移動を伴う業務について、移動の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む休憩・休息の状況、業務内容等の観点から検討し、併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価

③心理的負荷を伴う業務(簡易記載)

➡心理的負荷を伴う業務について、日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等について、負荷の程度を評価する視点により評価

日常的に心理的負荷を伴う業務

1,常に自分あるいは他人の生命、財産が脅かされる危険性を有する業務

2,危険回避責任がある業務

3,人命や人の一生を左右しかねない重大な判断や処置が求められる業務

4,極めて危険な物質を取り扱う業務

5,決められた時間(納期等)どおりに遂行しなければならないような困難な業務

6,周囲の理解や支援のない状況下での困難な業務

心理的負荷を伴う具体的出来事

1,事故や災害の体験

2,仕事の失敗、過重な責任の発生等(無理な注文・クレーム・ノルマ未達成等)

3,仕事の質(業務内容の困難性やギャップ等)

4,役割・地位の変化等(退職強要や配置転換等)

5,パワーハラスメント

6,対人関係(同僚・上司・部下等との関係)

7,セクシャルハラスメント

④身体的負荷を伴う業務(簡易記載)

➡身体的負荷を伴う業務について、業務内容のうち重量物の運搬作業、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況等のほか、当該業務が日常業務と質的に著しく異なる場合にはその程度の観点から評価

⑤作業環境(簡易記載)
温度環境

➡温度環境について、寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、寒冷と暑熱との交互のばく露の状況、激しい温度差がある場所への出入りの頻度、水分補給の状況等の観点から評価

騒音

➡騒音について、おおむね80dBを超える騒音の程度、そのばく露時間・期間、防音保護具の着用の状況等の観点から評価

2023年4月から中小企業も時間外労働60時間超過部分は1.5倍

 2023年4月1日より、中小企業も1か月の時間外労働が(1日8時間、1週間40時間を超える労働時間)60時間を超える場合、50%の割増賃金率を支払わなければなりません。

*深夜(22:00~5:00)の時間帯に行われる時間外労働が、60時間超に該当する場合には、深夜割増の25%+60時間超割増の50%で、1.75倍(175%)計算になります。

中小企業要件

中小企業に該当するかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断

業種①資本金の額または出資の総額②常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
上記以外の
その他の業種
3億円以下300人以下

*上記の表による中小企業に該当しない企業は大企業にあたり、60時間超の時間外労働に対しては、50%の割増賃金を支払わなければなりません(大企業は、2010年4月から適用)。

神奈川・千葉の監督指導結果

神 奈 川 県 千 葉 県 
総         数411276
1か月80時間以下の
時間外労働・休日労働の
事業場
226118
1か月あたり80時間超の
時間外労働・休日労働があ
った事業場
185158
1か月あたり100時間超の
時間外労働・休日労働があ
った事業場
11798
1か月あたり150時間超の
時間外労働・休日労働があ
った事業場
2813
1か月あたり200時間超の
時間外労働・休日労働があ
った事業場
賃金不払い10159

まとめ

 時間外労働を実施するには、36協定の締結・提出が必要になり(*就業規則の根拠)、届出た36協定の内容(一般・特別)により時間の上限に差異があり、それに伴う割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金の時効期間も当面の間は3年(5年になることは確定)に延長され、2023年4月からは60時間超の時間外労働は中小企業も1.5倍計算になります。

 また、長時間の時間外労働は、労働災害の原因となる一因でもあります。

2023年4月に向けて、残業時間を減らすことを検討してみてはいかがでしょうか?

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