妊産婦の就業制限

労働

 こんにちは、労務行政書士事務所 三九 です。

 令和4年は、育児介護休業法の改正が行われ、個別周知やこれから出生時育児休業や育児休業の分割取得などが施行されていきます。

 それらに伴い、忘れられがちな妊産婦の就業制限業務を確認してみましょう。

根拠条文

労働基準法64条の2 → 女性労働基準規則1条

第64条の2 (坑内業務の就業制限)

使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。

一 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務

二 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの

女性労働基準規則 

第1条 (坑内業務の就業制限の範囲)

 労働基準法(以下「法」という。)第六十四条の二第二号の厚生労働省令で定める業務は、次のとおりとする。

一 人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務

二 動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)

三 発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務

四 ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)

ずり=上記の掘削や掘採から生じるあまり価値のない岩石や土砂、などのことです。

労働基準法64条の3 → 女性労働基準規則2条

第64条の3 (危険有害業務の就業制限)

 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、育等に有害な業務に就かせてはならない。

2 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。

3 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。

第2条 (危険有害業務の就業制限の範囲等)

 法第六十四条の三第一項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。

一 次の表の上欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務(*表1とする)

年齢断続作業継続作業
満16歳未満12キロ8キロ
満16歳以上18歳未満25キロ15キロ
満18歳以上30キロ20キロ

二 ボイラー(労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。第十八号において「安衛令」という。)第一条第三号に規定するボイラーをいう。次号において同じ。)の取扱いの業務

三 ボイラーの溶接の業務

四 つり上げ荷重が五トン以上のクレーン若しくはデリツク又は制限荷重が五トン以上の揚貨装置の運転の業務

五 運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務

六 クレーン、デリツク又は揚貨装置の玉掛けの業務(二人以上の者によつて行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)

七 動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務

八 直径が二十五センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤を除く。)又はのこ車の直径が七十五センチメートル以上の帯のこ盤(自動送り装置を有する帯のこ盤を除く。)に木材を送給する業務

九 操車場の構内における軌道車両の入換え、連結又は解放の業務

十 蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務

十一 動力により駆動されるプレス機械、シヤー等を用いて行う厚さが八ミリメートル以上の鋼板加工の業務

十二 岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務

十三 土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが五メートル以上の地穴における業務

十四 高さが五メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務

十五 足場の組立て、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)

十六 胸高直径が三十五センチメートル以上の立木の伐採の業務

十七 機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務

十八 次の各号に掲げる有害物を発散する場所の区分に応じ、それぞれ当該場所において行われる当該各号に定める業務

イ 塩素化ビフエニル(別名PCB)、アクリルアミド、エチルベンゼン、エチレンイミン、エチレンオキシド、カドミウム化合物、クロム酸塩、五酸化バナジウム、水銀若しくはその無機化合物(硫化水銀を除く。)、塩化ニツケル(Ⅱ)(粉状の物に限る。)、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリクロロエチレン、素化合物(アルシン及び化ガリウムを除く。)、ベータ―プロピオラクトン、ペンタクロルフエノール(別名PCP)若しくはそのナトリウム塩又はマンガンを発散する場所次に掲げる業務(スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)又はトリクロロエチレンを発散する場所において行われる業務にあつては(2)に限る。)

(1) 特定化学物質障害予防規則(昭和四十七年労働省令第三十九号)第二十二条第一項、第二十二条の二第一項又は第三十八条の十四第一項第十一号ハ若しくは第十二号ただし書に規定する作業を行う業務であつて、当該作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させる必要があるもの

(2) (1)の業務以外の業務のうち、安衛令第二十一条第七号に掲げる作業場(石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場若しくは石綿分析用試料等を製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場を除く。)であつて、特定化学物質障害予防規則第三十六条の二第一項の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所における作業を行う業務

ロ 鉛及び安衛令別表第四第六号の鉛化合物を発散する場所次に掲げる業務

(1) 鉛中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十七号)第三十九条ただし書の規定により呼吸用保護具を使用させて行う臨時の作業を行う業務又は同令第五十八条第一項若しくは第二項に規定する業務若しくは同条第三項に規定する業務(同項に規定する業務にあつては、同令第三条各号に規定する業務及び同令第五十八条第三項ただし書の装置等を働させて行う同項の業務を除く。)

(2) (1)の業務以外の業務のうち、安衛令第二十一条第八号に掲げる作業場であつて、鉛中毒予防規則第五十二条の二第一項の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所における業務

ハ エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)、キシレン、N・N―ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリクロロエチレン、トルエン、二硫化炭素、メタノール又はエチルベンゼンを発散する場所次に掲げる業務

(1) 有機溶剤中毒予防規則(昭和四十七年労働省令第三十六号)第三十二条第一項第一号若しくは第二号又は第三十三条第一項第二号から第七号まで(特定化学物質障害予防規則第三十八条の八においてこれらの規定を準用する場合を含む。)に規定する業務(有機溶剤中毒予防規則第二条第一項(特定化学物質障害予防規則第三十八条の八において準用する場合を含む。)の規定により、これらの規定が適用されない場合における同項の業務を除く。)

(2) (1)の業務以外の業務のうち、安衛令第二十一条第七号又は第十号に掲げる作業場であつて、有機溶剤中毒予防規則第二十八条の二第一項(特定化学物質障害予防規則第三十六条の五において準用する場合を含む。)の規定による評価の結果、第三管理区分に区分された場所における業務

十九 多量の高熱物体を取り扱う業務

二十 著しく暑熱な場所における業務

二十一 多量の低温物体を取り扱う業務

二十二 著しく寒冷な場所における業務

二十三 異常気圧下における業務

二十四 さく岩機、びよう打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務

2 法第六十四条の三第一項の規定により産後一年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後一年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る

第3条 法第六十四条の三第二項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第一項第一号及び第十八号に掲げる業務とする。

まとめ(女性労働基準規則2条第1項)

* 見やすくするために表中は言葉を省略しています。

 上記の条文で必ず文言を確認してください!

就業が制限されている業務妊 婦産 婦妊産婦以外の女性
重量物取り扱い
(64条の3)
(前掲、表1参照)
ボイラー取り扱い申し出により✖就業可能
ボイラー溶接申し出により✖就業可能
5トン以上のクレーン・デリック、揚貨装置申し出により✖就業可能
運転中の原動機等の掃除、給油、検査等申し出により✖就業可能
補助作業ではないクレーン・デリック、玉かけ申し出により✖就業可能
動力駆動の土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転申し出により✖就業可能
丸のこ盤又は帯のこ盤木材送給申し出により✖就業可能
鉄道などに使用される小型車両の入換え、連結又は解放申し出により✖就業可能
プレス機械や鍛造機械を用いて行う金属加工申し出により✖就業可能
動力駆動のプレス機械、シヤー等による鋼板加工申し出により✖就業可能
岩石・鉱物の破砕機又は粉砕機へ材料送給申し出により✖就業可能
土砂崩壊おそれのある場所又は深度5M以上の地穴での業務就業可能就業可能
高さ5M以上、墜落により労働者がケガするおそれのある業務就業可能就業可能
補助作業ではない足場の組立て、解体又は変更申し出により✖就業可能
胸高直径が35CM以上の立木伐採申し出により✖就業可能
機械集材装置、運材索道等を用いた木材搬出申し出により✖就業可能
妊娠、出産、授乳等の機能に影響する化学物質が発散する場所での業務
多量の高熱物体の取り扱い申し出により✖就業可能
著しく暑熱な場所での業務申し出により✖就業可能
多量の低温物体を取り扱い申し出により✖就業可能
著しく寒冷な場所での業務申し出により✖就業可能
異常気圧下での業務申し出により✖就業可能
身体に著しい振動を与える機械等を用いて行う業務就業可能

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 は、冷蔵倉庫業、製氷業、冷凍食品製造業における冷蔵庫、貯氷庫、冷凍庫等の内部における業務等 が該当します。

ボイラーの溶接の「溶接」には、アーク溶接・ガス溶接・溶断が含まれ、又、さく岩機、びよう打機身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務 の「」にはチェンソーが含まれます。

 細かいことですが、妊娠が判明した方から相談があった(その後産婦)際には、妊産婦でなければ問題がない業務でも妊産婦であることにより就業制限に該当することがございますので 事 前 に 確認することをお勧めします。

* 見やすくするために表中は言葉を省略しています。

 上記条文で必ず文言を確認してください!

妊産婦から請求があった場合に制限

労基法 第66条 

  使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、一週間について第32条第1項の労働時間、一日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。

 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第三項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

変形労働制

① 1か月単位の変形労働制(労働基準法 第32条の2第1項)

② 1年単位の変形労働制(労働基準法 第32条の4第1項)

③ 1週間単位の非定型的変形労働制(労働基準法 第32条の5第1項)

労働基準法第32条、1日(8時間)及び1週間(40時間)の法定時間を超えて労働させることはできません。

時間外労働等

時間外労働・休日労働・深夜労働の禁止(第66条第2項、第3項)

*妊産婦からの部分的請求は認められる

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